社会福祉法人 岡山市手をつなぐ育成会



第51回 旭川荘障害医療福祉セミナー

第51回 旭川荘障害医療福祉セミナー

 

  地域サポートセンター仲よし

 

≪研修内容≫

 【講義1】「障害医療福祉の新たな地平~インクルーシブ社会を目指して~」

旭川荘 理事長  末光 茂氏

 旭川荘前理事長 江草安彦氏のレジュメをもとに、障害医療福祉の目指すところ「新たな地平」とは、ノーマライゼーションからインクルーシブ社会の創発であるという話を聞きました。我が国において施設解体が失敗した理由、さらには重症心身障害児者施設が必要な理由についての言及もありました。知的障害児者施設では医療が欠如しており、病院でありかつ福祉施設である重症心身障害児者施設が求められており、医療と福祉の一体化は日本だからこそ可能であるそうです。

 また、医療福祉サービスにおいて、支援者は評論家や傍観者ではなく、実践家として関わることが重要であるということを繰り返し話されていました。

 

 【講義2】「障害福祉制度の動向」         旭川荘 副理事長 仁木 壯氏

    措置制度から障害者総合支援法までの流れと今度についての説明がありました。

 

 【講義3】「意思決定支援と合理的について」    上智大学 教授  大塚 晃氏

 今回の研修の中でも特に関心があるものでした。脱施設を阻害するものは「家族(親の会)」「施設・事業所」「行政(天下り先、前例踏襲)」であり、ベンクト・ニィリエは「入所施設は、知的障害者をダメにする、家族をダメにする、行政をダメにする、社会をダメにする」と言っているそうです。現在ある入所施設をすぐになくすことはできません。それでも、ノーマライゼーションを実現するためにできること、それが意思決定支援と合理的配慮なのだと思います。

 施設入所している自己決定が困難な障害者に対する支援について、大塚氏は「私たち(家族・支援者)に意思決定支援をする資格はない!」と強く言われました。もともと、本人の意思を無視して入所させているのだから、今さら「意思決定支援をします」なんて言えないだろうという理由です。だからと言って意思決定支援をしないのではなく、そのことをしっかりと肝に銘じて、意思決定支援をしていかなければならないということです。神奈川県ではやまゆり園の利用者の聞き取りを始めており、今後は全ての入所施設利用者に意向の聞き取りをするそうです。

「我々は長い間、本人の意思決定能力を問題にしてきたが、問われるべきは、自分たちの意思決定支援能力である」という言葉を忘れず、自分たち支援者が社会的障壁になってしまわないよう、意思決定支援を実践していくことが重要です。

 

 【LIVE】「ポエトリーリーディング」 生活介護事業所ぬかつくるとこ 戸田 雅夫氏

 戸田氏による自作の詩を朗読するライブでした。戸田氏は脳性麻痺のため発語が不明瞭です。直筆の詩は戸田氏が朗読した後で、答え合わせのようにスクリーンに映し出されます。会場にいた100人以上が戸田氏の言葉を「聞こう!」という意思を持って耳を傾けていました。障害のある人たちの支援をしていくうえで一番大切であり基本でもある「声(思い)を聞く」ということを、素敵な詩を通して、楽しみながら再確認することができました。

 

 

 【講義4】「知的障害のある方の行動上の課題に対するアセスメントシステムと

       支援システム」              鳥取大学 教授  井上 雅彦氏

 知的障害のある人の10~15%が何らかの「行動上の問題 CHB(Challenging Behavior)」を持つと言われています。CHBの多くは環境の中で学習されたものであるため、環境を整備することで改善、減らすことができるそうです。また、誤学習の訂正(適切な行動を教える)でも改善が可能であるとの説明がありました。

 行動上の問題にアプローチするポイントとしては、①アセスメントの理解、②機能分析に基づくアプローチの理解、③チームアプローチの理解と実践+ICTの活用が挙げられます。また、アプローチをする前に、その行動は誰にとってどのように問題なのか?を支援者全体で共通理解することが重要です。

 講義の中では、井上氏が実践しているストラテジーシートによる機能分析をベースとした支援の流れについても詳しい説明がありました。

 

 

 【講義5】「合理的配慮としてのコミュニケーション支援」

前京都市児童福祉センター 副院長(児童精神科医)  門 眞一郎氏

 言葉でのコミュニケーションに制約のある重度知的障害の人に有効な、補助代替コミュニケーションツールとその実践事例の紹介がありました。一般の人でも情報の80%は視覚から入っており、自閉症の人ならそれ以上の割合で視覚優位であることから、コミュニケーション支援には補助代替コミュニケーションが必須であるそうです。門氏が推奨している「PECS(絵カード交換コミュニケーション法)」を使用すれば、自発的表出ができるようになるそうです。

 実際にトレーニングしている映像が流れ、発語のない重度知的障害の男性がPECSを使用して自発的に要求をすることができるようになったのを見て、有効性は感じられましたが、講義がPECSの宣伝に偏り過ぎていたように感じられ、少し残念でした。

 

 【シンポジウム】

「障害がある方の芸術文化活動の魅力と未来」

コーディネーター 鳥取大学 教授  川井田 祥子氏

 

      シンポジスト①厚生労働省  大塚 千枝氏

        「厚生労働省における障害者の芸術文化活動支援について」

 

      シンポジスト②NPO法人ひゅーるぽん  鰐川 華衣氏

        「共につくる舞台表現活動『広場をつくろう』からみえてきたこと」

 

      シンポジスト③ももぞの福祉園  池田 恵里氏

        「アートの制作にたずさわって~おもうまま かんじるままに~」

 

      シンポジスト④生活介護事業所 ぬかつくるとこ  丹生 和臣氏

        「ふつふつ、わくわく。ぬかは今日も発酵中。」

 

 厚生労働省が行なっている障害者の芸術文化活動支援についての説明、芸術文化活動に取り組んでいる事業所の紹介がありました。それぞれの活動内容だけでなく、今後の展望や課題についても話を聞くことができました。

 

 

≪感想≫

 2日間の研修を通して、障がいのある人たちを支援していくことの難しさや支援の大切さを再確認することができました。特に、意思決定支援と芸術文化活動支援についてしっかりと学びたいと思って参加した研修であり、とてもたくさんのことを得られたと感じています。

 大塚氏の講義の中で、「知的・精神・発達障害の人にとって、支援者(周囲の人)が社会的障壁になることがある」との話があり、自身のこれまでの関りや支援を振り返り、見直す必要があると感じました。『問題行動』と見るのではなく、サービスに対する『抗議行動』であると考えなければならない場合もあり、その人の意思表示だと捉えることができます。意思決定は個別性が高く、意思決定支援は簡単なことではありませんが、意思決定支援ガイドラインをしっかりと頭に入れ、障がいのある人が笑顔で生活できる支援をしていきたいです。

 また、シンポジウムで紹介された事業所の芸術文化活動の取り組みを参考に、支援者がすべきところと手を出してはいけないところを明確にして、Ⅰ型の日中活動や土曜日教室に活かしていきます。

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